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6月 融解連鎖~日本の社会システムはどこまで崩れるのか

(著者)風間直樹(東洋経済新報社)*10年3月4日発行
<読んだ経緯>
・日本の雇用の一面(日本社会全体を覆う生きづらさの一面)を「見える化」した「雇用融解」著者の最新作。「雇用融解」後と、融解が他の分野でも起きていることについて克明に語られる。
・前作同様一気に読ませるが、「ではどうしたら良いか」というところについては即効薬は見当たらず、読み進めるにつれ辛い気持ちになってしまう。
・融解の原因はおそらくグローバル化なのだろう。「暴走する資本主義」(ロバート・ライシュ)は、超資本主義(グローバル化)の弊害から私たちの社会を守るには、結局のところ、私たち自身が内なる「投資家」「消費者」(グローバル化で利益を得ようとする面)を自覚し、それに対して「市民」としての面を対峙させ、その視点でどう行動できるか(民主主義)にかかっているということだったと思う。でも、私(たち)に、グローバル化、非正規雇用を前提とする「激安サービス」を拒否し、正規雇用に努力する企業を意識的に支援することができるのだろうか・・?でも、しなければ現状は変わらないのだろう。

<第Ⅰ部「雇用融解第2幕」>
・年越し派遣村が注目された09年から1年、経済指標は改善されたが、実態はさほど変わっていない、むしろ「これまで必死に耐えてきたがどうにもならなくなった」という案件が増えている実態が紹介される。
・その中で「資格を取って青森に帰りたい。フォークリフト、玉掛けなどの資格があれば市場の仕事がある。ただ職業訓練のメニューはPCや介護ばかり」という声は、役所が訓練メニューを考えるシステムの欠点を指摘
・雇用保険を受給できない人向けの「訓練・生活支援給付」も、「受託した企業は手付金に加え人数分の受講料を受取るスキームのため、就職につながったなどの成果は問われず、とにかく受講者を集めるため、ビジネスマナーやPCスキルなど汎用性の高い講座ばかりとなっており、生活に窮していれば、希望と異なっても開講される講座に申し込まざるをえない」実態も。
・派遣法改正案をめぐる動きについても、政党等の内部事情ネタが語られるがどうも通俗的。グローバル化の中で日本がどのような雇用ルールを作って生きていきますよ、ひいてはこんな雇用ルールの国として生きていきましょう、という内容が語られないためか(著者に限らず)。本音と建て前のような議論しかなされないのは非生産的のように思う(第4章の「労働組合、派遣会社は誰のためにあるのか」も)。
・派遣、個人請負、外国人労働者、外国人研修生の労働現場の生々しい実態が紹介される。特に、私たちのすぐ隣に、外国人研修生を食い物にしている企業(農家等も)がいる可能性があるのかという現実に驚く。
・偽装請負の告発者たちがその後も不安定な状態(直接雇用に切り替えれても期間工どまり等)あるいは見せしめ的な対応がされていることが紹介される。県が仲介した日亜化学紛争の「まさか県が間に入ったのに合意がひっくり返されるようなことになるとは思わなかった」例なども紹介

<第Ⅱ部「融解連鎖」>
・第5章「住居融解~ハウジングプアの現実」は、ゼロゼロ物件、家賃保証会社、無料低額宿泊所、無届施設など、低所得者をターゲットにした悪質なビジネスの実態が語られ、結局、人が健康で文化的な生活を営んでいく基本となる「住」の部分のセーフティネットが十分でないことが原因であるとされる(各国では住政策の転換がなされていることも紹介)。確かにそのとおりだろう。ただ、行政が新たな金をかけて新たな公営住宅を造ることなどはほぼ不可能だから、縦割施策の壁を取り払い、限られた資源、資金を有効活用して、利用者視点のセーフティネットを組み立て、弾力的に運用していかなければならないのだと思う。
・貧困ビジネスの「無料宿泊所」でも、本人だけが生活保護申請に行っても追い返されるが、スタッフ(貧困ビジネス業者)が同伴するとすぎ認められるという記述は、事実とすれば恐ろしい。
・第6章「医療介護融解」では、介護型療養病床全廃や特養個室ユニット絶対視など現場に合わない施策のもたらした悲惨な実態が語られる。「国が決める」とか「計画を遂行する」などの従来型の進め方自体が「利用者本位でない」ということとイコールになっているのだろう。介護スタッフの困窮化や勤務医・看護職等の悲惨な実態
・第7章「地域社会融解」は、地域医療の優等生、佐久病院などの「長野モデル」が崩壊前夜であること、その原因はモデルの肝である人材育成システムの足を引っ張っている国や自治体であると手厳しい。
・第8章「公共現場融解」は、北海道大学の「謝金雇用」から始まり、(旧)社保庁、都営地下鉄、公的病院等の非正規雇用の実態が語られる。厳しい労働条件と低賃金の下で安心・安全の提供を支えてもらっていることに頭が下がりまた驚く。
・謝金雇用で北大を告発した人に北大の係長から届いた「あなた方謝金雇用の人たちの存在を肯定することは、公務員試験に合格した自分が流した血と受けた痛みを全否定することになる」という手紙が恐ろしかった。

<感想>
・著者は「あとがき」で、著名な学者たちから「おたくは経済誌なのだから「市場主義」が最良だと言うことをちゃんと言うべき」「ワーキングプアなどは大した問題ではない」などと言われたことを、「違和感がある」と紹介し、この認識のずれが、現場と向き合い、対話、議論することの有用性への信頼の差から来ていると述べている。同じ視点から、かつての「経済財政諮問会議」や「規制改革会議」における「異論は排除」「議論は要らない、問答無用」という姿勢を批判している。オープンな対話と議論を評価する著者の姿勢は大変評価できる。

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2010年06月30日 | 福祉、雇用 | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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