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9月 市民社会と地方自治

(著者)片山善博(慶應義塾大学教授、慶應義塾大学出版会)*07年8月10日初版第1刷発行
<経緯>
 職場の情報メールに片山・新総務大臣が自治省固定資産税課長をされていたときの政策(バブル崩壊の地価下落局面での固定資産評価替えに当たって都市部を下げ地方を上げ総額を確保した)のことが載っており、以前、男女共同参画等の先進的な政策を勉強するため買ってあった本書のことを思い出し、今回は、そのとき飛ばしてしまった税関係の論文を読了。「税(納税者)から考える地方自治」がこの方の一貫した姿勢であったことが(遅ればせながら)理解できた。
<概要>
(1)税から見つめる地方自治
 ・「地方制度の見直し等において住民が行政サービスの受益者であるだけでなく経費負担者であるという視点が欠けている」
 ・「なぜ行政改革がスムースに進まないのか。それは、改革による行政コストの削減が直ちに負担軽減につながらないからではないか」「住民監査請求で住民が勝っても、そこで「浮いた金」はいずれどこかの行政経費に充てられてしまう。監査結果と税負担が多少なりとも連動する仕組みが必要」
 ・「法人事業税は府県の行政サービスと法人の事業活動との対応関係に着目した応益税だが、(実際にも大いに応益関係もあるのに)その認識の希薄な法人が多い」「それは、納税者としての法人と行政との間に応益性について議論する機会がないことが一因」「些細な例だが、固定資産税の超大口納税義務者がいる場合の超過課税では議会で意見を聞く仕組みが導入されたのは嚆矢として意義あること」
 ・「地方自治とは本来税金の使い方を住民自身で決め、地域の将来の方向付けをすること、歳出の規模や内容、税負担の水準を納税者が決める仕組みを構築しておく必要がある」
(2)分権時代の地方税制
 ・「税は財源調達の手段という以上に、行政と住民・納税者が接触する最前線」「首長は複雑怪奇な税制にもっと関心を持つべき。そうすれば、わかりやすく透明性の確保された税制に改めなければならないことが理解できるはず」
 ・「分権時代において地方の税務職員は、単に国が決めたことを理解する能力ではなく、与えられた裁量の中で何を選択するか、どのように合意形成していくかなどの能力が必要」
 ・「住民にわかりやすい税制にしていくことが重要」「住民からの苦情に対して、今まで「国が決めた制度だから」などの紋切り型の説明ではなかったか。それが複雑怪奇な税制を今まで存続させてしまった原因の一つ」
 ・「自治省の課長として固定資産税を担当したとき、固定資産税がいかなる理念と理由からそういう仕組みになっているか、自ら了解し第三者に説明することはできなかった、それほど複雑怪奇なもの」
 ・「鳥取県知事の時代には、住民にわかりやすくという観点から、条例改正を新旧対照方式に改めた」
 ・「税制のわかりやすさという点では、制度の簡素化とともに、透明性を高めることも重要」「自治省固定資産税課長在職中、(全国の納税者の間に不公平のあることが容易にわかってしまう)評価額に対する課税標準を情報公開(全てオープンに)したが、特に混乱は起きなかった」「しかしこれは次善の策。納税者は法律上「縦覧」(ほしいままに見る)できたはずなのに、運用で「閲覧」(自分のしか見られない)のようになっていた」「同じく課長時代には、固定資産税の課税明細書の添付を実行した。縦覧になど行かない99%の住民が、課税の内訳を知ることになり、混乱した市町村もあったがすぐ収束に向かった」「固定資産税は末永く存続すべきものであり、そのためには納税者の信頼が必要で透明性が不可欠」
 ・「分権時代には、完璧主義になるのではなく、間違いがあるのは当然という前提でそれを速やかに直す仕組みを用意しておくことが重要」「苦情や不服申立は、避けるのではなく歓迎すべき」
(3)法人事業税の再検討
 ・「98年当時、外形基準課税の導入が焦点となっていた。法人事業税は基本的に法人の所得を課税標準としていたが、事業税本来のあり方からすると事業活動の規模等を表す何らかの指標(外形基準)を用いるべきではないかという意見があった」「同時に国・地方を通じた法人所得課税の実効税率が他の先進国に比べて高いということから課税ベースの拡大と実効税率引下げがなされたが、更なる引下げを求める意見も強かった」「外形基準は税収を極力減らさないで実効税率を引下げる最も現実的な手法と見なされた」
 ・以下、「外形基準の導入とは」から「外形基準として何を選択すべきか」「外形基準の導入に際して考慮すべき事項」まで、緻密な説明がなされる。外形基準の選択に当たっては、「所得や収入という法人単位でしか捉えられない指標を課税標準としていることから生じた苦肉の策である「分割基準」を解消し、課税団体の中で完結的に課税要件を把握できる仕組みにすべき」としている。
 ・「04年から一部外形基準による課税が始まっており、付加価値と資本金等の額が外形基準として採用されている」「新制度は関係者の努力によって定着しつつあるが、検討すべき対象法人が資本金1億超となっていることからそれを免れるため大幅減資する例もあると聞く。深刻に受け止めなければならない」
<感想>
 このほか、著者の持論である地方議会改革などユニークな論文が多く勉強になる。税金関係のものも(難しいものもあるが)わかりやすく書かれているし、「市民、納税者が担う地方分権」という考え方が一貫している。このように分の言葉でしっかり語れる方には、じっくり仕事に取り組む時間と環境が与えられ頑張って頂きたいと思う。以上

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2010年09月23日 | ソーシャルキャピタル、ガバナンス | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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