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10月 これも経済学だ!

(著者)中島隆信(慶應義塾大学商学部教授、ちくま新書)*06年8月10日第1刷発行
<経緯>
 「障害者の経済学」の著者によるもので、前書と同じく経済学的に最も縁遠いと考えられている分野を経済学的に分析した本。今回は、福祉に加え、伝統文化と宗教を取り上げている。京都にも関係が深いと考え、前書と一緒に購入。前書同様大変読みやすい本だった。
<概要>
(1)経済学的思考のすすめ
 「問題の原因を人間性に求めることは、しばしば真の原因を見えにくくし根本的解決を見失う」「法で規制しても経済的合理性に基づかなければ失敗するし、禁酒法時代のようにブラックマーケットを拡大することもある」「経済学的思考が重要。不正へのインセンティブを与えない仕組み(相撲協会が千秋楽に7敗どおしを対戦させる)など」
(2)伝統文化、その生き残りの秘密
 ・「伝統文化はすべて世の中のニーズがあって生まれる。ニーズは時代とともに変化するが、伝統文化は生き残ってきた。それは、実用性から文化の域に昇華させることに成功したから」「上達のための長い時間と差別化された技(参入障壁)、それを支える年功制を採用しながら、その中で競争性を確保してきた」
 ・(余談)著者は「野球ファンの多くは贔屓のチームなどを応援に行くが、大相撲ファンは相撲そのものが好きで足を運ぶ。溜り席のファンは力士に声援を送る訳でもなくひたすら土俵を見つめるが、野球のフェンスのように土俵の安全を守ってきた」「しかし、05年九州場所で多くの観客が大記録に挑戦していた朝青龍を応援せず地元出身力士を応援した(朝青龍は勝名乗りを受けるとき失望感から涙を流した)頃から観客と力士の伝統的な信頼関係(文化性)が変容していくのを感じた」としているのは印象深い。
 ・「文化振興政策を正当化する経済学的根拠は「文化の公共性」であり「取引費用引下げ効果」(異文化の衝突回避等)を挙げる人も多い」一方「「保護対象の認定の困難さ」や「保護が非効率を生む」ことを理由に文化振興政策に反対する意見もある」
 ・「伝統文化は(安易に政府の保護に頼るのではなく)文化マーケティングを行う必要がある。日常性を排した空間づくりなど」
(3)宗教も経済活動だ
 ・「供給者(出家者)と買い手(在家信者)による信仰という宗教サービスの取引(スミスも国富論で宗教の世界も競争市場(既存宗教と新興宗教等)であると指摘)」
 ・本来宗教サービスはその強固さ(信仰)にあるが、日本の仏教は様相が異なる」「檀家制度は、宗教の競争コストを下げ経営を安定させ、その分、行政サービスを含む檀家サービスに力を入れさせ、寺は地域コミュニティの中心となった」「しかし戦後の高度成長時代に実質的に崩壊した檀家制度は、近年の人口減少社会で一層深刻な危機になっている」「沖縄のお寺は、檀家制度崩壊後の姿を現している。僧侶は事実上葬儀社との契約で生計を立てている」
 ・「こう見ると、日本のお寺に未来はないように見えるが、サービス業のウエートが高まる日本で、特に発展の期待される健康医療、観光・集客、コンテンツ、育児支援分野は全てお寺の強い分野」「競争社会の人間の心のよすがともなり、発展する可能性はある」
(4)世の中に「弱者」はいない
 ・ここは、「障害者の経済学」と重なる部分が多いので省略(「弱者は作られる」「弱者制度は現代の身分制度であり、行政の責任範囲を限定するとともに、ガバナンスコストを下げるために存在し、経済学的には非合理的(無駄遣いが多い)」等)
(5)経済学は懐の深い学問
 ・「人間の欲望は、動物と異なりきりがない」「伝統文化や宗教は人間を欲望の追求から解放することで、資源の無駄遣いを押さえ、本能の暴走による社会的な混乱を防ぐ」
 ・「経済学は欲望の追求を賛美する学問ではなく、限りある資源をどうすれば効率よく活用できるかを考える学問」「人間は自由な状態におかれていても、自由のコスト減らすため、不自由(ルール、組織)をつくる」「社会的に問題となるのは個人の犯罪でなく組織のそれ(歯止めが利かなくなる)」
・「経済学の利点は善人や悪人を作らないこと」「悪人をつるし上げるメディア報道は世の中を分析する視点を芽生えさせず有害」「誘惑に勝てない弱い人間が悪人にならないようなインセンティブを考える学問である経済学を学ぶ意義がある」以上

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2010年10月29日 | ソーシャルキャピタル、ガバナンス | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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