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12月 「市場か、福祉か」を問い直す~日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く

(著者等)NIRA(総合研究開発機構)研究報告書(2010年3月)
<契機>
 NIRAのメールマガジンで、本書が、以前から読みたいと思っていたエスピン・アンデルセン「福祉資本主義の三つの世界」の3つの政策レジームに依拠して分析、提言を行っているのを知り、興味を持って読了。政策レジームで議論することの有効性、有用性がよく示された論文だと思う。
<概要>
(1)問題意識
 ・「20年にわたる日本経済の停滞は3つの面で家計に悪影響を及ぼした。①生活水準の低下、②(不安・リスクの増大による)家計の効用の低下、③所得格差の拡大、本研究会は2番目の点に着目し、個人の過剰なリスク負担から社会の公平なリスク負担にシフトさせる(リスクの社会化)政策レジームについて提言する」
 ・「個人が経済的リスクを負うことは合理的ではない。社会保障制度はリスクの社会化であるが、その一部でしかない」「リスクの社会化は、事前、事後の対処策だけでなく、リスクが公平に共有化させる仕組み、リスクが顕在化しないようにする人々の努力を引き出す仕組みなど多岐にわたる」「政策全体の体系(レジーム)(で議論する必要がある)」
(2)3つの政策レジーム
 ・「各政策レジームにおけるリスク対応策、①自由主義レジームでは市場メカニズムによるリスクの社会化、②社会民主主義レジームでは国家が担う所得再分配策によるリスクの社会化、③保守主義レジームでは伝統的組織の共助扶助が担う所得再分配策によるリスクの社会化」「日本は自由主義レジームと保守主義レジームの両方の特徴を持つとされるが、それぞれのレジームが有効に機能するための制度が完備されておらず、リスクが個人にしわ寄せされている」
 ・「自由主義レジームから見た日本の問題点、①効率性を阻害する各種規制の存在、②金融市場がリスク・シェアという点から未発達、ノンリコースローンなどの遅れ(←確かに、住宅ローンを払えないため自宅を競売されながらもまだローンが残ってしまうことが当然とされている(リコース・ローン)日本はおかしいと思う)など、個人がリスクに対処することを可能にする仕組みが不十分」
 ・「社会民主主義レジームから見た日本の問題点、①日本の再分配は、現役世代から高齢世代への所得移転のウエイトが高く、現役世代間や子ども世代への移転にしわ寄せ、②労働市場の公平性も不十分、③窓口での行政裁量余地が多く、制度の実効性が乏しい」
 ・「保守主義レジームから見た日本の問題点、①共同体に保護してもらう代わりに雇用者の立場が弱い、②再分配政策の機能が弱い」
(3)日本は政策レジームを見直す時期
 ・「自由主義レジームへシフトのためには、徹底した規制緩和、新規参入コストの軽減と民間のリスクシェア機能の強化(ノンリコース化も含む再チャレンジコストの軽減)」「社会民主主義レジームへシフトのためには、世代間のリスク・シェアと公平な労働市場の実現(そのための、所得の正確な把握のためのインフラ整備と政府の透明性、信頼性の確保)」「保守主義レジームへシフトするためには、雇用の公平性とワークライフバランス実現のための規制」が必要
(4)日本の目指すべき方向性
 ・「日本では、共同体にリスク・シェルターとしての機能を担わせることは限界、リスクを公平に負担する社会を実現することが重要、社会保障給付でターゲティング(高所得者から低所得者への所得移転)とユニバーサリング(全ての所得階層に一定の給付を保障)の考えがあるが、ターゲティングが望ましい」
 ・「日本における政策の柱として、①高齢者世代に偏った再分配政策の見直し、窓口における行政の裁量排除、②市場メカニズムを最大限重視した政策の実現と競争を支えるインフラ整備(雇用調整助成金の見直し、金融機関のリスク仲介能力の向上、贈与税・相続税の引き上げ等)、③雇用規制による一律保護でなく個人が自分に合った働き方を主体的に選択できるようにする必要がある」
<感想>
 現行政策の問題点と方向性について、具体的かつ簡潔にまとめられた好論文。ターゲッティングの立場から子ども手当などには批判的。ただ、政策レジームから政策を考えるという正攻法的な議論が政治の場でなされないのは残念なこと。以上

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2010年12月23日 | 福祉、雇用 | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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