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10月 社会保障の「不都合な真実」

(著者)鈴木亘(学習院大学経済学部教授、日本経済新聞出版社)*10年7月15日1版1刷
<契機>
 日経の書評を見て即購入。日本の社会保障制度が経済学的には不合理の固まりだということはよく指摘されているが、その詳細を私ら素人にもよくわかるように説明してくれる良書。著者は以前日経・経済図書文化賞を受けた「生活保護の経済分析」共著者のお一人(文藝春秋最新(11月)号でも保育分野について同旨主張を展開している)
<はじめに>
 「最近、楽観的な社会保障論~年金制度は破綻しない、子どもが増えれば社会保障財源は改善する、医療費・介護費を拡大して景気回復 等々~が世の中に流布され、現政権ではむしろ常識にさえなっている」「しかし、経済学の目から見ればこれらはあまりに荒唐無稽な間違いなのでそのことを多くの国民に理解してもらうため本書を刊行」 
<第1章 社会保障の「不都合な真実」>
・「世界最速の人口減少と高齢化の下、日本経済はゼロ成長もしくはマイナス成長が常態化する。その中で日本の社会保険の採用している賦課方式を維持しようとすると、一人の現役層が一人の高齢者を支えることになる。まさに悪夢」
・「日本の社会保障制度の特徴は、①賦課方式の財政、②公費・補助金漬け、③高コスト体質、④護送船団方式であり、一言で言えば、高度成長時代にしか成り立たない「おこぼれ頂戴モデル」」
・「年金は元々は積立方式だったが、その後の大盤振る舞いで積立金が不足(厚生年金で540兆円の債務超過)し、現役層の積立金を流用する自転車操業が常態化、それが賦課方式として制度化された」
・「高度成長時代に始まった医療保険はともかく、少子高齢化の急速に進んでいる中で始めた介護保険を賦課方式にしたのは、正気の沙汰とは思われない」
・「日本の公費投入率の高さ(3割以上)は社会保険を持つ国の中でも突出。しかも、その金は利用者でなく施設に流し込まれ、その公費の入った施設を潰せない、ということで、高コスト、護送船団方式となる」「高齢者も既得権益層化し、自分の払った保険料(の現在価値)の何倍もの給付を受けて当然と思っている」
・「小泉構造改革が諸悪の根元のような議論がまかり通っているが、全くの間違い。社会保障費の増加分の一部削減など気休め程度にしかすぎない」「今の日本で、中福祉・中負担などあり得ず、中福祉・超高負担か、低福祉・高負担のどちらを選ぶかである」
<第2章 子ども手当は子どものためか>
・「子ども手当は景気対策?(GDP引上効果0.17%)、少子化対策?(子育費用2985万円に対し468万円)、子育て支援策?(パチンコ代等)どれも?、結局無駄遣い」
・「ただ、その金を保育等施策に回せという意見もあるが、現在の保育業界の異常な高コスト体質等を維持したままでは、同じく無駄遣い」「現行保育サービスは、乳児一人に月57万円つぎ込んでいる計算」「厚労省は待機児童数を46千人としているが、実際には最大80万人程度と推定」「高コスト体質を改善しない限り幾ら金があっても対応できない」
・「本来対立してもおかしくない(=だから市場で調整されるべき)園、保護者、被雇用者の利害が、膨大な公費投入と参入制限という従来型の政策(おこぼれ頂戴モデル)に守られて「金持ちけんかせず」でいられ、団結(して国などに保育の充実を要求)できている異常さを認識すべき」→これが全編を貫く著者の主張で、大変わかりやすい。確かにインセンティブ型の施策は現行不十分だと思う(構築はなかなか難しいと思うが)。同じことは、世界一高い学費の原因が国庫補助の少なさにあるかのような信じ難い議論がなされている高等教育分野にも言えると思う。
・最後に、著者は、子ども手当てのバウチャー化と病児・病後児保育の社会保険化を提案している。
<第3章 社会保障は貧困を減らせるか> 
・生活保護をめぐる相反、矛盾する議論(北九州餓死事件などで行政を攻撃するかと思えば、貧困ビジネスの巣窟となっているとか、国民年金受給者より多いのはけしからんなど)について、「生活保護のダム理論」(行政は膨大な生活保護予備軍(からの申請)をダムのように必死に防ぐが、そこを通過した人々には何から何まで親切に面倒を見てあげるという「オールオアナッシング」の制度。著者に言わせると、組織の責任範囲を絞り込み、その範囲内は責任を持つが、外のことは知らないという「官僚の行動原理の産物」)で説明できるとする。説得力がある。
・しかし、当然のこととして、それでは増大する対象者に対応できず、また、受給者はいつまでも「貧困の罠」(自立へのインセンティブが何もない)から抜け出せない。著者の提案する改革案は、当面、①短期救済と本格認定の二段階化、②資産の一時的所有権移転等を行うとともに、基本的には、負の所得税の導入である。
・貧困ビジネスについても、不正を行った人間を糾弾するだけでなく、(不正へのインセンティブを与える)現行政策が問題だという視点から考えるべき。規制を強化するだけでは、不正が巧妙化・潜在化したり、どこからも救済されない人が増えるだけとし、アメ(経済学的~インセンティブを与える~施策)の必要性を強調する。「不正へのインセンティブ」の記載など大変具体的
<第4章 年金は本当に大丈夫なのか>
・「民主党は、年金記録問題を最優先し、制度改革は4年かけて議論するとしているが大変な間違い。団塊世代が受給者に転じるこの時期の年金財政の悪化を放置すると国民負担がさらに増大」→この通り事態が進んでいる。照合のために浪費される膨大な金のこともようやく問題視されるようになったが遅かった。
・「制度改革は、保険料の引き上げよりもマクロスライドによる給付の引き下げが望ましいが、民主党の年金改革は基本的には保険料の引き上げ型」「特に、所得把握率の低さをこのままにして民主党案を導入すると、フリーライダーが大幅に増える」
・そこで、「まず納税者番号制と歳入庁の早期創設が必要」「そして、年金純債務を清算事業団のように別会計にして、所得比例年金を純粋な積立方式で運営すべき(賦課方式という悪夢からの解放)」「その上で、純債務を現在の受給者、現役層、将来世代でどう負担しあうか、国民的議論をすべき」
<第5章 「介護難民」はなくせるか>
・「介護保険は、「在宅分野」では画期的な市場開放を行い、供給量が一気に増加させ(成功し)たが、「施設分野」では既得権益を持つ業界団体の政治活動によって参入規制が維持され「待機老人42万人」などが介護難民となって無届施設などに流入している」「特養は多額の補助金投入によって1床あたり1千~2千万の建設費がかかっているが、入居費や利用料が安く抑えられている」
・「高コストの特養施設に代わり擬似的な施設の総量規制を撤廃して増設をはかることが現実的」「その上で、介護保険財政への影響を抑えるため、自己負担の増、家族への現金給付の導入、混合介護(介護保険からは基準額を払うが、サービス価格は自由化する)の導入等を行うべき」
<第6章 医療は誰が支えるか>
・医師不足問題や後期高齢者医療を巡るドタバタ劇について経済学的に分析した後、ここでも、賦課方式が時代に合わなくなっているとし、京大の西村教授らの提案する医療保険への積立勘定の導入を提案する。
・そして、制度全体を積立方式化するだけでなく「医療貯蓄口座(MSA)」の導入も考えるべきとしている。
<第7章 財政破綻は避けられるか>
・ここでは、賦課方式と高コスト構造の下で借金漬けとなった日本の社会保障の財政破綻を避けるため、民主党などの主張する「社会保障は成長戦略」などの政策について検討している。
・「賦課方式の下で社会保障費を拡大すると、高齢者層が将来世代に負担を押しつけて需要を先食いするもので、成長戦略から最もかけ離れたもの」「施設整備などの設備投資も恐ろしく非効率」
・「では景気対策にはなるか。介護・福祉分野は乗数効果が大きいと言われているが、賃金が安いからで、当たり前。他のサービス業にも共通した特徴。問題は一度増やした財政支出は既得権益化し、景気が回復したからといって減らせない、つまり景気対策としては不適切」
・さらに、「高齢者の過剰貯蓄取り崩し効果」や「所得再配分による消費刺激効果」についても、その効果は極めて限られたものであることを論証している。
・「こうした中、介護・保育分野における規制緩和だけは一考に価する」「問題は政府にそれを行う覚悟があるかどうかである」として、本来的+現実的な政策を提案している。
<感想>
 全編から、著者の「社会保障の不都合な真実に目をつむらず(思考停止に陥らず)国民的議論をしていこう」という強い想いが伝わってくるすばらしい本。以上

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2010年10月20日 | 福祉、雇用 | こめんと 0件 | とらば 1件 | とっぷ

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