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10月 障害者の経済学

(著者)中島隆信(慶應義塾大学商学部教授、東洋経済新報社)*2006年12月11日第5刷発行
<契機>
 「社会保障の不都合な真実」の著者らが受賞した日経・経済図書文化賞の過去の受賞作の中に発見(06年度)、アマゾン中古で購入。本書も「社会保障の~」と同様、福祉(の最たるものといえる障害者問題)を経済学的に扱ったもので、「社会保障の~」ほどあからさまな言い方ではないが、制度の基本が、健常者(又は、施設管理者や親)が予め想定した障害者像に基づき、転ばぬ先の杖を用意するというもの(当事者目線で、多様で発展するニーズを想定していないもの)であると批判し、経済学的な考え方を取り入れたものに改善していかなければならないとしている。
<概要>
・なぜ障害者の経済学なのか
 「経済学を障害者研究に適用する利点は、経済学の中立性と単純な善悪論を採用しないこと」「行政は平均値を参考に制度を作るため、保障が不十分な人と福祉に依存する人を作り中途半端になる」「さらに、福祉関係者が弱者保護者として法に守られているうちに向上心を失っている」「福祉の現場に正しいインセンティブをつける必要がある」
・障害者問題がわかりにくい理由
 「障害者という名称から生まれるステレオタイプ的な障害者観が私たちの頭を堅くしているから」「人間一人一人みな違うという当たり前の考え方から出発する必要がある」
・転ばぬ先の杖、というルール
 「社会システムを「転ばぬ先の杖型ルール」と「案ずるより産むが易し型ルール」に分けると、日本は、特に福祉分野は圧倒的に前者」「究極の先の杖型は士農工商などの身分の固定化、競争やリスクが生じず社会は安定、コストが節約できる」「資格制度も先の杖型であり、生身の消費者と直接対面して行うサービスでは、しばしば支障を来す」「日本も先の杖型では対処できない社会になったことを認識すべき」
・親は唯一の理解者か
 「愛は所有につながり、所有は苦しみの根元であるこだわりにつながる」「特に親子の愛は対等ではなく、支配に変化し、すべてを親が抱え込み、無理心中などになることもある」「死に至る5段階説(否認・孤立→怒り→取引→抑鬱→受容)は障害者の親にそのまま当てはまる。親が治す対象として障害と対決するのでなく子どもの一つの特性と認める(受容)ことが、自らを救い、子どもを親の支配から解放する」「親の責任を軽くして負担を和らげるとともに、親の権限を弱め、第三者が冷静に問題解決方法を提案する仕組みが必要」
・障害者差別を考える
 「障害者が差別を感じるのはどういうときか、それは「障害者という身分」(かわいそうな人、純真な心を持つ人、がんばっている人。だから支援するが、分不相応のことをしてはいけないという先の杖型ルール)から逸脱したことをしようとするとき」「先の杖的発想に基づく格付けを「シグナル」というがそれは万全ではない、先の杖型ルールは障害者にとって住みづらい環境を作り出す」「差別とはシグナルがもはや有効でないことを意味する」「誤ったシグナルによって起こる差別を解消するためには、固定的イメージに基づく現代の身分制度を壊していかなければならない」「そのためには、一つは差別される側が正しい情報発信を行うこと、もう一つは先の杖型から生むが易し型にルールを変えること」
・(その後各論的に、「施設」「養護学校」「労働」の各分野での施策がインセンティブ型になっていないこととその改善策について述べた後、最大の課題である「地域移行」について考察している。)
「施設から地域への移行が困難な理由は地域に人手が足りないことと、障害者が自分で物事を決める経験がないこと」「施設臭のある施設(職員が管理的かつ指導的であるところ)に何年居ようと障害者は決して自立できない」「健常者の自立は自分のことが自分でできること、しかしこの論理では障害者はいつまでも自立できない、障害者にとっての自立は意志決定力を身につけること」「ニーズが出ればそれを提供できる資源の使い方を考えることができる」
「(成功例といわれる)べてるの家の理念は、偏見差別大歓迎、三度の飯よりミーティング、安心してサボれる職場づくり、勝手に治すな自分の病気、弱さの情報公開など、すべて逆転の発想」「大事なのは障害者がどれだけ地域に出ているかということ」「障害者の価値観は年々変化するが、福祉制度や各種の割引制度は障害者の多様な消費パターンを促進するものではない」「自分の暮らし方を自分で選べる制度にしなければならない」
・「以上障害者問題と呼んできたことのほとんどが社会全体の問題と共通項を持つ社会を映す鏡(歪んだ親子愛と虐待、自立がトラウマとなるニートなど)」「経済構造は生産と消費から成り立ち、2種類の仕組みがある、一つは能力の高い一部の人たちが生産し、それ以外の人を養うこと、二つはすべての人が広く浅く生産に従事すること、前者は競争メカニズムが働き、後者はある程度競争制限的となる、英知が試されている」
・以上の外、「画一的な福祉制度からこぼれた軽度障害者が刑務所に収容されている」「アマルティア・センが、人は置かれた状況に応じてそれなりの幸福感を持とうとするから、福祉政策を効用で評価することに反対する」などのコラムも目から鱗。以上

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2010年10月24日 | 福祉、雇用 | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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