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5月 自治体職員のための政策法務入門3福祉課の巻

(監修)出石稔(執筆)杉山富昭(出版)第一法規 *H20.11.10初版
<読んだ経緯>
・貧困が社会問題になる中、福祉の再構築が求められているが、制度が極めて複雑(実施主体が様々に分かれ、何十年も前から細々とされている施策と近年の大規模制度改革でされている施策が混在など)で、知る人しか知らない部分も多い。これでは真に利用者の役に立つリストラクチャリングができないので、素人目線で勉強を開始。その一環として、要綱行政の実態などについて学ぶため読んだもの。よく配慮され、勉強になる良書であった。
<第1章福祉課の仕事>
・「福祉行政の担い手は、自治体、特に市町村のはずだが、自治法改正で国との関係が根本的に変わったはずの現在でもまだ補助金を受けて事業を実施する事業体という意識しかなく、自治の意識の乏しいところが多い。政策法務の視点が必要」
<1 敬老祝い金をめぐる怪>
・100歳の誕生日前に死亡した方の生存確認をしないで家族に要綱に基づく敬老祝い金を渡したケース
・贈与か行政処分か(要綱は支給基準を定めた内規で、本件は贈与)
<2 どこまでできるの?成年後見制度の活用>
・療育手帳B1級を受けている成人した子の唯一の保護者が入院してしまったケース
・日常のお世話について、「措置制度が廃止され契約関係になったため、自立支援サービス契約を結ぶ必要があるので、民生委員に「事実上の代理人」(無権代理)として契約を締結してもらう」←(感想)出発点がこのような不安定かつ個人責任に結びつくおそれのあることに依拠していることに驚いた。そもそもこんなことをしてくれる民生委員がいないのではないか。
・「成年後見等の手続きに3~6か月かかる」
<3 あれも自治体これも自治体~後期高齢者医療制度>
・後期高齢者医療の実施主体が、住民に姿の見えづらい特別地方公共団体たる広域連合であること、保険料の徴収などは市町村が行わなければならないことに疑問を呈している(「機関委任事務に変わる新しい二階層性」)
<4 ことなかれ主義と法の間~介護給付金と説明責任>
・給付金を初めて申請した方が、今まで説明を知らなかったとして4年前に遡って請求したケース
・「広報紙で制度を知らせているから申請しない方の自己責任と言って良いか、説明責任を果たしたかどうかがポイント」
・説明責任の法的根拠「行政の公正の確保と透明性の必要性から出た概念。行政手続法制定当初、透明性(1条)は相手方の権利利益を擁護することを念頭においていたが、最近は単なる透明性に留まらず主権者たる国民に説明責任を負うという意味も加わったと考えられている」
・「制度があっても周知していなければ市民の権利行使を拒否しているのと同じ」「説明書等を窓口に配備しHP等に掲載+窓口に訪れた際に説明したか」
<5 すぐそこにある可能性~高齢者虐待>
・通所サービス施設から、高齢者虐待が疑われる利用者がいる、という通報があったケース
・「当事者からの虐待の相談は「隠れた相談」になることが多い」「高齢者虐待防止法では専門的に従事する職員を配置する努力義務があるが、実際には難しいので自分たちで専門性を高めるしかない」「市民との対話能力も必要」
<6 ことばの裏を読めますか~接遇・相談の技法~>
・「人間の行動特性をよく考える。理屈でなく感情で行動する動物である。話し合いのプロセスで安心感、満足感、納得を引き出せるかどうかが大事」
・「聞く」「聴く(→相談者自身も気づいていない事柄や聞き手を信頼しなければ語れないような情報が入ってくる。面接内容を決定するのはあくまで相談者である市民であるということ)」「訊く(職員から質問して必要な情報を引き出す)」
・「最終段階は、相談を受けている側の職員が情報提供、法的説明、選択肢の提示などの実施」
・「人間はネガティブなことを嫌う(都合の悪いことは覚えていない)。できるだけ決定を相手に委ねる」
・「人は自分の好きな人の言うことをよく聞く。好意を抱く理由は、まず外見的な魅力(→きちっとした服装)、次に何らかのつながりを感じるとき(→共感を示す)」
・「面接相談は相談者が抱えている問題を把握できるとともに、相談者の行政に対する理解を深めることに寄与。コミュニケーション技法を発揮しつつ法的な解決策に導く」
<7 昔の最先端~附属機関の要綱設置>
・市民に公示されていない要綱で重要施策を実施していいのか
・「従来は侵害留保説から給付行政を要綱ですませてきたが、分権時代の自治体にはそぐわない」「要綱行政は宅地開発指導要綱(規制行政)に始まる自治の最先端」「それが給付行政、授権行政に拡大されてしまった」「しかし、給付金の原資は税金なのだから、給付の要件、内容、手続き等は本来条例で定めるべき(重要事項留保説)」「特に、条例で定めるべき附属機関の脱法的要綱設置は許されない」
・「要綱を活用すべき場合もある(試行的な取り組み、臨機応変な対応)」
<8 わがまちの憲法~自治基本条例と福祉基本条例~>
・「自治基本条例は政策法務のシンボルで、分権自治体の標準装備となる可能性を秘める」「自治基本条例を頂点とする条例の体系化、政策分野別の基本条例の整備、個別政策の条例化等」「条例化は給付行政を主とする福祉分野にも押し寄せる」「各部署が混乱しないよう条例の整備方針を定める」
<9 総合福祉条例><10 こども条例>と条例関係が続く。9では、介護保険条例など市民の負担を定める条例が求められる中で重要事項留保説に立った福祉政策法務の取り組みが求められること、10では、市民の参画・協働と代表民主制との調和の難しさが語られる。

11からは、保育所民営化の住民運動、福祉施設隣接地の通行権や時効、保育所での事故対応(損害賠償交渉)、保育料滞納という個別問題について法的問題点が語られる。
15は「苦情調整委員制度」という、福祉基本条例で新設しようとする組織についての議で、「地域の問題解決力がなくなる中、自治体は住民間トラブルにまで関与しないと行けないのか」←確かに現下の大きな問題だと思う
16は改正行政事件訴訟法について
17は「セーフティネットのトリック?~生活保護の実態」は、「生保と税の最大の違いを情報公開の違い(前者はほとんどされていない)」であるとし、
 「具体的支給額が納税者に説明されていないこと」
 「就業政策(自立支援)との連携がないこと」
 「医師の診断書に対する第三者チェックがないこと」
 「不正受給に対する強制返還の規定がないこと」など、
おどろくほど旧態依然で閉鎖的な生活保護の制度への批判がなされている。大変参考になり、もっと広く明らかにされなければならないことだと思った。
最後に18で福祉分野における偽装請負について警鐘を鳴らしている。
<感想>
・上記のとおり、条例化=国民への公開の進んでいない福祉分野における政策法務分野からの改革の論点について非常に有益な知識を提供してくれる良書であった。特に、生活保護制度に対する指摘は重要だと思う。

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2010年05月03日 | 法律、ルール | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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