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5月 「みんなの意見」は案外正しい

(著者)ジェームズ・スロウィッキー(訳者)小高尚子(角川文庫)*21.11.25初版発行
<読んだ経緯>
・「孤独なボーリング」など社会関係資本の本を読む中で、人と人との交流やコミュニケーション(濃度)の持つ価値について考えさせられていた時、文庫化されたばかりの本書を発見し購入。烏合の衆、寄らば大樹などとは全く違い、集団の知恵の持つ意義と、組織や社会がそれを生み出す(狂気を防ぐ)(≒社会関係資本の充実)条件について多面的に論じた、価値ある本だった。
<はじめに>→著者の主張はここに集中的に記載
・「適切な状況下では、集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中で一番優秀な個人の知力よりも優れている」「専門家を追いかけることは間違いで、しかも大きな犠牲を伴う間違いだというのが本書の主張」「集団は答えを知っているのだから」
・一般には、「どんな人も個人としてはそれなりに聡明で思慮分別があるのに、集団の一員となると途端に愚鈍になる」「集団は、その中の最高のメンバーの水準まで達することはなく、むしろ最低のメンバーの水準まで堕落してしまう」と言われている。「暴動や株式バブルは本書の主張を逆説的に支える証拠である。集団が賢くあるために欠かせない多様性と独立性という条件が欠けると生じる事態」
・「集団が賢くあるために必要な条件は、多様性、独立性、分散性」「集合的にベストな意志決定は意見の相違や異議から生まれるのであって、決して合意や妥協から生まれるのではない」
<第1章集団の知恵>
・「集団の知恵という言葉に実質の伴った価値を与え、私たちを驚かせてやまないのは、みんなの意見に含まれている情報量の多さ」
・「賢い集団であるための4つの要件(確度の高い予想をする鍵)は①意見の多様性(各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)②独立性(他者の考えに左右されない)③分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)④集約性(個々人の判断を集計して集団として1つの判断に集約するメカニズムの存在)」
<第2章違いから生まれる違い~8の字ダンス、ピッグズ湾事件、多様性>
・「優秀な意志決定者とそれほど優秀でない意志決定者が混在している集団の方が、優秀な意志決定者だけからなる集団より必ずと言っていいくらいよい結果を出す」
・「多様性の奨励は、有権者や市場などの大きな集合体よりも小さな集団やメンバーが限定されているかっちりとした組織体(企業等)にとってより大きな意味を持つ」
・「人は集団思考の餌食になりやすいが、それから抜け出すのも比較的簡単。真の被験者1人他はサクラの実験で集団(サクラ)に同調してしまう人も、自分と同意見のサクラが1人いるだけで真意を表明する」
<第3章ひと真似は近道~模倣、情報の流れ、独立性>
・「独立性は合理性や中立性とは違う。どんなに偏っていて非合理的であってもその意見が独立していれば集団は愚かにならない」
・「集団のメンバーがそれぞれ独立していたら適切な判断を下せる可能性が圧倒的に高くなる」しかし「現実に独立性を確保するのは難しい。日常的に影響を及ぼし合っている人々が、集団として賢明な判断を下せるのか」
・「賢い模倣はすばらしいアイデアを広め集団のためになるが、自ら考えることなく行う模倣は害になる。二種の模倣を区別するのは難しいが、賢い選択は、初期の段階で選択肢も情報も豊富に存在していること、みんなの意見より自分の意見を優先する人が少数でも存在していることなどが必要」「「決定が重要であればあるほど賢い選択が起こりやすい」「組織や社会の意志決定システムを改善しようと思ったら皆ができるだけ同時に意志決定する仕組みを作るべき」
<第4章ばらばらのカケラを一つに集める~CIA、リナックス、分散性>
・「分散化されたシステムが本当に賢い結果を生み出すためには、システムに参加しているメンバー全員の持っている情報を集約するシステムが必要(著者は「政策分析市場」等の市場メカニズムの活用を推奨)」
<第5章シャル・ウイ・ダンス~複雑な世の中でコーディネーションをする>
・これまでは「認知」(どこかの時点で必ず明快な答えが存在する)問題についてのもの。この章は「調整」(集団のメンバー全員が同じような行動を取る中、他の人と調整する方法を考え出さないといけない)問題
・「多くの場合には人々の予測が収斂する、ランドマークのような目立つ焦点が存在している(シェリングポイント(暗黙の調整))」
・「市場がきちんと機能していれば、モノやサービスは一番安く供給できる人から一番ほしがっている人のところにわたる」
<第6章社会は確かに存在している~税金、チップ、テレビ、信頼>
・この章は「協調」(利己的で不信感いっぱいの赤の他人どおしが一丸となって何かに取り組む)問題。「メンバーには「調整」問題と違い、私利私欲の追求以上のものが求められる」
・「人々は狭い意味での自己利益を超え、最終的には共通善のためになるような行動を取る」「資本主義の進化の道筋を検証すると、信頼性の向上、透明性の確保、利己的な行動の制限という方向に向かっている」「信頼せよそして検証せよ」
<第7章渋滞~調整が失敗したとき>
・この章から第2部で応用問題を扱っている。「ロードプライシング(混雑料金)をもってしても渋滞は無くせない」
<第8章科学~協力、競争、名声>
・「互いに協力し合う科学者の生産性は上がり、個人で研究している場合と比べてよりよい研究成果が出せる」「今日の複雑な問題を解決するには複数の視点が必要」
・「科学界が今日直面する課題は、科学的研究の商業化が進む中でこれまでのような成功が維持できるかと言うこと」
・また「ブランド力がない人がいったために重要な研究が無視されてしまう危険性もある」
<第9章委員会、陪審、チーム~コロンビア号の惨事と小さなチームの動かし方>
・「コロンビア号の惨事は、小さな組織をこう運営してはいけないという見本」「小さな集団はどこにでも存在しており、その意志決定には無視できない影響力がある(陪審、取締役会等)」「小さな集団は判断を大きく誤る可能性があるとともに、個々の部分を足し上げた以上のことができる可能性がある」
・コロンビア号の事故では、「議論を白紙の状態から始めない(結論から議論を出発させる)、深刻な問題がある可能性を視野に入れない、自分たちはよく知っているという誤った思い込みがある(ちなみに、陪審には「証拠ベース」と「評決ベース(まず評決して少数派を説得することに注力)」があるがその評決ベース。責任者がメンバーに送ったメールが特徴的(質問の中に既に責任者が期待する回答が書き込まれている))、「深刻な問題があっても自分たちにはそれを解決できる可能性がない」という暗黙の前提(したがってそれに連なることを予め想定から排除する思考法)、少数派の意見が全く聞かれない(メンバーがコメントする機会を作らないのはどんな状況下でも絶対に間違い)、最も欠けていたのが視点の多様性」「天の邪鬼のいないところでは集団の判断がよりひどいものになる場合(集団極性化)がある」「メンバーの意見を集約する仕組みがないとチームのもっている集合的な知恵を殺してしまう」
<第10章企業~新しいボスって、どうよ?>
・「ザラの成功は、柔軟に動けるボトムアップ型の組織(服をデザインしてから15日で店頭)」
・「ギャング映画に見る組織の型①ゴッドファーザⅡ(トップダウン)②ヒート(プロ同士の強い結びつき)③レザボア・ドッグズ(仕事別にチーム)」「完全無欠な型はなく企業は3つを一つにしようとしている」
・「集合的な意志決定が重要だが、それは合意形成とは違う」「合意形成重視はソリューションの質を落とす、誰も責任を取らない」「階層的組織の最大の問題は情報が自由に流通しないこと」
・「集団は分散化されたソリューションを使って「調整」や「協力」の問題を上手に解決できる」「ただし、これがうまく機能するには、参加者が常に顧客からのフィードバックを受けていることが必須」「「認知」の問題もそうだが誤った「有能CEO救済主説」が根強い。過去の成功は将来の成功を保障しない」「社内で「予測市場」のような集合的な知恵を集約するメソッドを活用すべき」
<第11章市場~美人投票、ボーリング場、株価>
・「バブルの発生も崩壊もみんなの意見が間違った事例の典型例」「他の人たちが買っているからと言う理由だけで株を買うことを拒否する投資家が増えれば増えるほどバブルが加熱する可能性は減る」「市場を美人投票のように捉える投資家が少なければ少ないほど、市場の意見は力強く、賢くなる」
<第12章民主主義~公益という夢>
・「市場と違って政治の世界は自己利益の追求がみんなのためになるとは限らない」し「人は市場と同じようにローカルな知識を頼りに判断しているだけ(そしてその知識は驚くほど少ない)」だが、それは「正しい意志決定を下せる候補者を選ぶ可能性が高いかどうか」とは関係ない。「意志決定機関の人数を少なくすればするほど正しい結論に達する可能性が減る」「健全な民主主義は全体としてプラトンの守護者が考えつくどんなソリューションよりも優れている」
<解説、新時代の常識としての「みんなの意見」>
・本書に対する異論「みんなの意見には(専門家の意見と異なり)改善の余地がないこと」「みんなの意見と専門家の意見を使い分けることが大事」
<感想>
・それぞれの組織や社会で本書の視点で実践していくことが大事なのだろうと思う。

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2010年05月15日 | ソーシャルキャピタル、ガバナンス | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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