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6月 福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

(著者)前田正子(岩波書店)*2008年6月26日第1刷
<読んだ経緯>
・福祉の再構築が必要なこの時期に役に立つと思い読む。
・何より「・・がいまできること」という題名がいい。「いま」しなければ意味がない、そして、皆が「自分ができること」を出し合っていかなければ進まない、というニュアンスがよく出ている。
・「市民目線」「市民のために何ができるか」に徹底的にこだわることでここまでできる(変わる)ということがよくわかる本。組織は違うが、視点と手法の定まったトップがイノベーションを起こしていくことを実感しているので大変共感する。素晴らしい本、そして何より読みやすい。
・印象的だったのは、わからないことは率直に当事者に聞くという著者の姿勢。これこそ市民協働(の出発点)だと思う。

<はじめに>
 「副市長になって行政の窓口から見えてきた地域の現実は、それまで私が見ていた社会とは大きく異なっていた」「社会的なケアを必要とする人が急増していて、しまもどの人も社会的に孤立している」「社会的サービスを提供する大きな仕組みを作るのが得意な行政と、柔軟に個々のニーズに応えることのできる市民が協働すれば、社会的ケアの新しいセーフティネットを創造できるかも知れない」

<第Ⅰ部子育て支援の現場から>
・「高齢者と子どもとどっちが大事なのだ、という厳しい質問に直面」「子育て支援が重要と考える人たちでさえ自分たちの子や自分の立場(働く親と専業主婦、保育園に入れている家庭と待機児童の家庭など)の意見だけに固執し、お互い様の気持ちを忘れかけているのかのような意見」「そのような意見を聞く度に私はがっくりきた」
・「保育園建設説明会で「私は2人の子どもを預けており保育園は必要だが、私の近所には作らないでほしい」と堂々と発言する人もいる」「子育てがしにくいと言われるが、自分だけ、自分の子どもだけ住みやすくなりたいと思っても無理なのに・・。子育てがしにくい背景の一端を垣間見た思い」
・「がんばって認可保育所を増やしてきたが、無認可保育所がなければ働けなくなってしまう親も多く悩ましい」
・「育児休業中に地域子育て支援拠点に行ったら、担当者から育児に悩んでいないかなどあれこれ聞かれ、違うと思った経験。私が欲しかったのは、ゆっくり過ごせる場所や友人であり、指導する専門家ではなかった。だから子育て拠点の運営は地域の親たちにしてほしかった」「子育て支援の主人公は親子であり、まず最初に丸ごとその親子を受け止める場所が必要」「自分たちでいろいろ準備するより、公的なメニューにお客として参加する方がずっと楽だが、それでは地域で生きていく主体的な力、育児力を弱める」「深刻な悩みや問題を抱えているが、行政の窓口には来られない人がいる。このような人が相談したく思えるようになった時期に的確に専門窓口につなげるような場所が必要」
・「協働とは市民の自由な発想と柔軟なスタンスの良さを生かしつつ、新しく生まれる社会的ニーズに対して、いかにより良い公共・社会サービスを生み出していくかという行政と市民の共同作業」「育児の閉塞感を持って保健所の窓口を訪れた母親から、保健所の窓口の対応への不満をしばしば聞いたが、私は「保健所の窓口はそういう場ではない。あなたの不満に答えるような場は別に作るから」と答えていた」←(感想)本書で唯一異論を持った箇所。おっしゃることはよくわかるが、想定外の方が来られても対応するのが行政だろうということと、そうやって行政がどんどん窓口を狭め(専門化?)ることが本当に良いのかという疑問(「福祉事務所」といいながら「生活保護事務所」となってしまい、従来の雇用保障などからこぼれ落ちそうになっている、(初めて経験で)とても不安な時期にあり、一番臨機応変に対応しなければならない層の人たちの「福祉ニーズ」への対応を社会福祉協議会などの民間に押しつけてしまっているのではないのかという疑問)
・以下、上記の視点から、横浜市のユニークな取り組みが各種紹介されていく。
・「NPOびーのびーの運営する地域子育て支援拠点」
・「市民どおしで子どもを預け・預かる子育てサポートシステム」
・「ベビーカーを折りたたまずバスに乗れるようにしたい」「私は課長を呼んで「できない理由を作るという後ろ向きの仕事に何人もの人間が何時間も使わないで欲しいとお願いした」「交通局が真剣に検討を始めたのは私に言われたからではない。ベビーカーの問題が自分たちの問題だと再発見したからだ。作った委員会の名は「ベビーカーにお子様をのせたまま市営バスをご利用いただくルールづくり委員会」」「新しいルールが始まって1か月くらいたった頃、市議から、高齢者に評判が悪いと教えられ本当にがっかりした。乗り降りに時間がかかると文句を言われ嫌な思いをした高齢者もいるはずなのに・・」
・「公園が、子供達の遊べない場になっている。市役所に、子どもに公共の水を使わせるな、公園で遊ぶ子どもの声がうるさい等の苦情もある」「根本は、地域の住民がそれぞれ感じている不満や意見をお互いに話すのではなく、個別に行政にぶつけ、ルールづくりを要望することにあるのではないか」
・「子供達が徐々に挑戦的(危険)な遊びにチャレンジしていける、たき火もできるプレーパークの設置」「リスク(許容される危険)とハザード(重大・死亡事故に繋がる要因)の区別が大事。国交省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」もその点を指摘」
・「深刻化する虐待、養育支援が必要な親の増大」「子どもはどんなにひどいことを親にされても親が大好き」「父親の失業から1年もたたないでアル中、母親の家出、娘への性的虐待と崩壊してしまう家族」「バブル期に児童擁護施設はガラガラで施設不要論まであったが、いまは全く足りない」「虐待だけでなく、多層的な支援のネットワークの形成が必要」

<第Ⅱ部急速に変貌する地域>
・「若者たちに居場所と役割を」
・「寿~日本の近未来」「労働者のまちから福祉のまちへ、横浜市の生保費の1/7、アルコール依存症の何千人もの男達の向こう側に何倍もの数の、涙を流し続けた女や子どもがいたと思うと・・、寿を良くしようとする人たち」
・「増加する在住外国人」「市民の2%が外国人、通訳派遣、母語を生かした学習支援、お母さん達の情報交換の場づくり、市民通訳ボランティアの派遣」

<第Ⅲ部急増する福祉ニーズと逼迫する予算>
・「増える福祉予算(生活保護費、高齢者福祉~介護保険、児童福祉費それぞれについて、現状と増えざるをえない事情を説明)」
・「子育てにお金がかかるという声が多いが、実際にお金がかかるのは高校・大学の教育費であり、乳幼児期とは段違い。同じお金を経済的支援に使うなら高等教育期の学費の援助をする方が効果的。逆に、子どもが小さい間だの最も深刻な問題は「孤立」であり、最も必要なものはお金で買えないもの(第Ⅰ部で述べたとおり)」「経済的に逼迫している家族への経済支援は必要だが」「いずれにしても、子育ての基盤を充実させ児童手当もさらに充実させるとなれば、国でも地方でも負担は不可能」
・「必要なのはつながりの再構築」「当事者意識を持つ人が減り、システムから自己利益を引き出すことに腐心する人が増えると社会はもたない」「地域の小児科を守るため不要の受診をしないよう呼びかけた母親たち」
・「行政の果たすべき役割は、まず、制度を適用しただけでは問題が解決しない人、制度の適用からこぼれているが困難な問題を抱える人に対して必要な支援を考え、それを行政でできることできないことに分けること、さらに、行政ではできないが、対応可能な他の社会的資源を見つけコーディネートしていくこと、そのためには、常にアンテナを立て、ネットワークを作り信頼関係を築いておかなければならない(=本当の意味でのソーシャルワーカーとしての役割)」「しかし、行政だけですべてが解決でき、新しいセーフティネットの網が張れるとはとても思えない」「様々な団体や人とのつながりを利用してやっと一人の若者等を支えていくことができる、行政とNPO、企業、市民が互いに手を携え一人一人を細やかにフォローする新しいセーフティネットを気づくことが必要」「そのために行政側が大きな問題を抱えていることは事実(下請けと見なす姿勢、NPO等が実情をよく知っているのに意見を聞かない、一方的にサービス内容等を決める、指示するなど)、行政側が改めて市民との協働について学習することが不可欠」

<あとがき>
・「自治体の予算状況をよく理解してもらうことや、政策に優先順位を付ける重要性を知ってもらう必要性を感じたことが本書執筆の一因」「炭谷茂さんから、ソーシャルインクルージョン(単に給付等をするのではなく、社会の仲間に入れていくこと)の話を聞き目からうろこが落ちる思い」「それは、子育て支援には金を配ればいいとばかりに児童手当にばかり関心がいくことに私が抱く違和感への答えだった」←読み終わり、即著者の前著も注文した。以上

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2010年06月07日 | 福祉、雇用 | こめんと 0件 | とらば 0件 | とっぷ

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